会社設立には様々な書類の作成、手続きが必要になります。

複雑・難しいと思われがちですが、ここでは、会社設立に関する

重要事項を分かりやすく説明していますので、ぜひ皆さまの

起業にお役立ててください。

1.会社の種類

2.新会社法施行で何が変わった?

3.株式会社と合同会社、設立するならどっち?

4.会社設立の流れ

5.定款を作ろう

6.法務局へ行こう

7.設立後の届出は?

8.税務面から見た会社設立時に有利になるポイント

(1)株式会社

   株式会社とは、株主の責任が出資額を限度とする有限責任社員

  のみから成り立っている会社をいいます。つまり、すでに出資した

  金額の範囲内でのみ責任を負います。  

(2)合同会社

   合同会社とはLLC(Limited Liability Company)とも呼ばれ

  ています。

   出資者全員が出資額を限度とした有限責任のみを負います。

  また、会社の定款を自由に決めることができるので、 少人数で

  起業される方にお勧めです。

   なお、定款の認証が不要なため、株式会社の設立に比べて、

  設立費用が安く、手続も比較的簡単です。

(3)合名会社

   合名会社とは、会社債権者に対して直接かつ連帯無限の責任を

  負う無限責任社員のみからなる会社をいいます。

   会社が債務を払うことができない場合は債権者に対して直接の

  責任を負います。社員の責任が重くなりますが、設立手続は比較

  的簡単です。

(4)合資会社

   合資会社とは、出資額を限度として責任を負う有限責任社員と

  債権者に対して直接の責任を負う無限責任社員からなる会社です。

   合名会社と同様、無限責任社員についてはその責任が重くなりま

  すが、設立手続は比較的簡単です。

 平成18年5月に新会社法が施行されました。

 新会社法の施行は、新たに起業を目指す人々にとっては、多くの

メリットが享受できるようになりました。 

 新会社法と旧商法などを比較した場合、会社設立やその運営手続等

が大幅に簡素化され、会社に関するさまざまな法律上の制約や基準などが

廃止若しくは緩和されたからです。

(主な新旧対比表)  

 

 旧  法

新会社法 

 有限会社 資本金300万円以上  設立不可 
 株式会社 資本金1,000万円以上 資本金1円から設立可能

 合同会社

      − 新たに設立可能 
 役   員

株式会社の場合

取締役3名以上

監査役1名

取締役1名で可能

(譲渡制限会社)

 株   券 原則発行 原則不発行 

(1)有限会社制度が廃止された

   有限会社は資金が300万円以上あれば、設立可能でした。

   しかし、会社法の施行とともに、有限会社制度が廃止され、

  新しく有限会社を設立することができなくなりました。

   ただし、過去に「有限会社」を設立している場合、そのまま

  事業を続けることが可能ですし、有限会社の商号も使用するこ

  とができます。

   また、株式会社への移行も可能ですが、商号変更等の手続きが

  必要です。 

(2)最低資本金の規制撤廃

   これまでは株式会社の最低資本金は1,000万円という規制があり

  ましたが、新会社法では資本金は自由に決めることができるように

  なり、1円の資本金でも株式会社を設立することができます。

   ただし、資本金1円で会社を設立しても、会社設立時にかかる

  諸費用や設備等には多くの資金が必要です。

   よって1円という金額だけに着目して、会社を設立することは、

  少し危険です。

(3)類似商号規制の廃止

   以前は、苦労して考えた会社名も、本店となる住所(各市町村)に

  同じ社名、あるいは類似した社名の同業がすでに存在すると、その

  社名を使うことはできませんでした。

   しかし、これからは「同一の住所に同一の社名がなければ、その

  社名を名乗ることができる」ようになりました。

   ただし、類似商号規制が廃止されたといっても、社名が同じで、

  同業者である場合には、「不正競争防止法」により損害賠償請求

  をされるというケースが考えられますので、注意が必要です。  

(4)取締役は1人でよい

   旧商法において、株式会社は、取締役は3人以上、監査役は

  1人以上必要でしたが、会社法では、株式譲渡制限会社に該当し、

  取締役会を置かない場合には、取締役は1人でよいことになります。

  ちなみに監査役も不要となります。

   これまでは、株式会社の設立にあたって自分以外の役員の決定

  に悩むことがあり、家族や親類等ににお願いすることもありましたが、

  新会社法では、その必要が無くなりました。 

 会社の種類には、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4つ

があります。

 その中で出資者が有限責任しか負わなくてもよいのは、株式会社と

合同会社のみです。

 有限責任とは、出資者が出資した金額までしか責任を負わなくて

よいということです。仮に、会社が倒産した場合でも、原則、出資者

は出資額までしか損失を被ることはありません。

 よって、会社の設立の際に、株式会社と合同会社、いずれを選択

すればいいかで悩まれる方が多いです。

 次に株式会社、合同会社の比較表がございますので、ぜひ、

ご参考にして下さい。  

 

 株式会社

合同会社 

信用力

高い 

株式会社に比べると低い 

認知度

高い 

平成18年5月より設立

が可能となったため、

世間的な認知度は低い 

 出資者と経営者

分離されている 

同一 

 出資比率

議決権や配当は株式の所有割合に比例する

意思決定や配当は出資比率に関係なく自由に決められる

 意思決定機関

株主総会

取締役会 

出資者全員の同意 

 役員の任期

原則 

取締役2年

監査役4年

例外(譲渡制限会社) 

取締役監査役

ともに最長10年

 任期なし

 設立費用

登録免許税15万円

定款認証5万円

定款印紙4万円 

(電子定款の場合は

印紙代金不要)

合計24万円 

登録免許税6万円

定款認証0万円

定款印紙4万円

(電子定款の場合は印

紙代金不要)

合計10万円

 ここでは、会社を設立するまでの流れをおおまかに記載しております。

 どのような作業や手続きが必要なのかを事前に確認してみて下さい。

  (1) 会社概要の決定

    会社を設立する上での必要事項を決めます。

    会社名、会社の目的、本店所在地、発起人、役員、発行可能株式数

   資本金、事業年度などなど

  (2) 会社の目的、類似商号の調査

    会社の目的が法律上問題ないか、また、同一の住所に同一の

   商号が存在していないかを会社の本店所在地を管轄する法務局

   で確認します。

  (3) 法人印の作成

    法人で使用する各種印鑑(実印、銀行印、角印)を作成しましょう。

    直接はんこ屋さんに赴いてもいいですし、ネットで注文する事も

   可能です。

    作成には、おおむね1週間ほどかかります。

    法人の設立書類には法人の実印を押印する必要がありますので、

   急いで法人を作る必要がある方は、会社名を早く決定し、印鑑の注

   文を早めに行う必要があります。

  (4) 印鑑証明書の取得

    法人設立には、発起人や代表取締役等の印鑑証明書も必要と

   なりますので、あらかじめ用意しておきましょう。

  (5) 定款を作成する

    定款とは会社の基本的なルールを記載した書類です。

    細かい内容は、5.定款を作ろうに記載しております。

  (6) 定款の認証

    定款を作成したら公証役場で定款の認証を受けます。

  (7) 資本金の払い込み

    定款に記載した資本金を出資者の名義で発起人の通帳に

   振り込みます。

    振込後、その通帳の表紙とその裏(支店名等が記載されている

   ページ)、入金額が記載されているページのコピーを取ります。

    このコピーを払込証明書とホッチキス止めし、法務局へ登記

   申請の際に提出します。

  (8) 法務局で設立登記申請

    本店所在地を管轄する法務局にて、設立登記申請を行います。

  (9) 設立後の各種届出

    税務署、都道府県税事務所、市町村役場、社会保険事務所等へ、

   必要書類の届出を行います。

(1) 定款とは 

   定款とは会社の基本ルールを定めたものでとても重要なものです。

   定款は発起人が作成し、署名、捺印をして、公証人役場の認証を

  受けなければなりません。

   公証人に認証を受けた定款は、設立の登記をする際に必要となり

  ます。

   なお、定款には4万円の収入印紙を貼る必要がありますが、定款を

  電子文書として作成した場合は収入印紙を貼る必要がありません。

   電子定款を作成するためには、電子証明書の発行や特別なソフト

  の購入費用として別途約10万円が必要となりますので、司法書士、

  行政書士以外の方で電子文書の定款を作成するのはあまり現実的

  ではありません。

(2) 定款の内容

     定款の記載事項は、次の3つに分けられます。

   ① 絶対的記載事項

    必ず定款に記載しなければならない事項です。一つでも抜けていると

   せっかく作成した定款が無効になってしまいます。

    ・会社の事業目的

    ・商号

    ・設立の際の出資額又は最低額

    ・本店(本社)の所在地

    ・発起人の氏名と住所

    ・発行予定の株式総数

   ② 相対的記載事項

    必ず定款に記載しなければいけない事項ではないが、定款

   に記載することによって法的効力が生じる事項。

        ・株式の譲渡制限に関する規定

        ・取締役の任期

        ・取締役、監査役の員数など

   ③ 任意的記載事項

    記載しても法的な効力のない事項ですが、経営上必要な内容

   があれば記載します。

     ・事業年度

     ・定時株主総会の収集時期など

(3) 定款認証の際の注意事項

   ① 定款は公証人役場への提出用、設立登記申請用、会社保存用

     の3通作成し、持参する必要があります。

   ② 紙ベースで定款を作成した場合は、収入印紙が必要となります

     ので、 公証人役場に赴く前に4万円の収入印紙を購入しておく

     必要があります。

   ③ 訂正が生じた場合に備えて、発起人の実印を持参することを

     お勧めします。

(1) 必要資料

   登記申請の際には、次の書類を用意する必要があります。

   ① 会社設立登記申請書

   ② 登録免許税貼用台紙(収入印紙貼付済みのもの)

   ③ 定款(認証済みのもの)

   ④ 資本金の払い込みがあったことを証明する書面

     (払込証明書+預金通帳のコピー)

   ⑤ 取締役の就任承諾書書

   ⑥ 取締役の印鑑証明書

   ⑦ 印鑑届出書

   ⑧ OCR用申請用紙 など

(2) 法務局申請の際の注意点

   申請書類を法務局に提出すると、その場で職員の方が、書類の

  チェックを行ってくれます。

   もし、訂正個所が見つかった場合でも、その場で訂正できるよう

  法人の代表者印(法人の実印)を持参されることをお勧めします。 

(3) 設立日について

   会社の設立日は法務局に設立書類を提出した日になります。

  よって、1月1日など、法務局が開いていない土、日、祝日は設立日

  にすることができませんので、注意が必要です。

(4) 申請後について

   法務局へ各書類を提出し登記申請をすると、不備がないかの

  審査が行われます。審査期間は約1週間です。

   審査の結果が分かる日を補正日といい、補正日までに何も連絡

  がなければ登記は無事に完了です。

   登記が完了すると、登記簿謄本、印鑑カードの交付申請ができる

  ようになります。登記簿謄本や印鑑証明書は、銀行での法人口座の

  開設、諸官庁への届出などで必要となります。

   また取引先から提出を求められることもありますので、何通か取得

  しておきましょう。

 会社設立後、税務署等に届出が必要となります。

 届出の中には期限を過ぎると、有利な特典が受けられなくなるものも

ありますので、注意が必要です。 

(1) 税務署へ提出するもの

名称

提出期限

 添付書類

法人設立届  設立後2ヶ月以内 

登記簿謄本

定款

いずれもコピー可

青色申告の承認申請書

(※1) 

設立後3ヶ月以内

(※2) 

 

給与支払事務所等の開設

届出書 

設立後1ヶ月以内  

源泉所得税の納期の特例

適用者に係る納期限の特例

に関する届出書 

適用する月の前月

末日

 

棚卸資産の評価方法の

届出書

第1期目の申告期限  

減価償却資産の償却方法

の届出書

第1期目の申告期限   

(※1) 税務上の有利な特典がたくさん受けられますので、

    必ず提出されることをお勧めいたします。

(※2) 設立から3ヶ月以内に事業年度が終了する場合には、

    事業年度の末日の前日が提出期限となります。

    例えば、4月1日設立 5月31日が決算の場合は、

    5月30日が提出期限となります。  

(2) 都道府県税事務所へ提出するもの

   法人設立届 … 設立後1ヶ月以内

    ⇒ 登記簿謄本及び定款を添付(コピー可)

(3) 市町村役場へ提出するもの 

   法人設立届 … 設立後2ヶ月以内

    ⇒ 登記簿謄本及び定款を添付(コピー可)

(4) その他

   別途、社会保険事務所、労働基準監督署、職業安定所への

  届出が必要となります。

(1) 会社設立のメリット、デメリット

 メリット

デメリット 

対外的信用力の上昇 設立費用の発生

所得税と法人税の税率差

を活用した節税

赤字でも最低7万円の税金

が生じる

生命保険の活用 交際費が制限される 
退職金の支給

申告作業が複雑になるため

税理士費用が発生する

青色欠損金の7年繰越 社会保険への強制加入
減価償却の任意計上

役員の改選登記が必要

(2年から10年に一度)

資本金が1,000万円未満で

あれば、設立から2年間

消費税が免除

 
事業承継・相続対策での活用  
資金調達がしやすい  

(2) 設立時に有利になる税務のポイント

 ① 個人事業主で、年間所得(売上-経費)が600〜700万円以上であれば

   法人設立を検討する。

    まず、法人税と所得税の税率構造の違いをご確認ください。

    法人税(資本金1億円以下の場合)

所得金額                   税率 
800万円以下  18% 
800万円超 30%

    所得税

 所得金額 税率   控除額
195万円以下  5%   0円
195万円超 330万円以下 10% 97,500円 
330万円超 695万円以下 20%  427,500円 
695万円超 900万円以下 23%  636,000円 
900万円超 1,800万円以下 33%  1,536,000円 
1,800万円超 40%  2,796,000円 

   ご覧の通り、法人税は800万円で一段階上がりますが、所得税は

  6段階刻みで税率が上がります。

   所得税は利益が上がれば上がるほど税金が多くなる仕組みになっています。

   個人の方につきましては、利益の状況や、扶養親族の構成等により、一概

  には言えませんが、一つの目安として、所得が600万円から700万円以上

  になった場合には、一度、法人の設立をご検討されてはいかがでしょうか。

② 青色申告の承認申請書は必ず提出する。

    青色申告のメリットは様々ありますが、中でも、『欠損金の繰越控除』

   の適用は、設立時には欠かせません。

    例えば、このような会社があったとします。

    第1期目 100万円の赤字 第2期目 150万円の黒字

    ・青色申告をしている場合の税金

    第1期目 7万円 

    第2期目 (150万円-100万円)×40%=20万円

    ・青色申告をしていない場合

    第1期目 7万円

    第2期目 150万円×40%=60万円

    ※青色申告を選択していると、1期目の赤字と2期目の黒字を相殺

     して、2期目の税金を計算することができます。設立1期目は初期

     投資が多く、赤字となる可能性が高いので、ぜひ、青色申告を申請

     しましょう。    

 ③ 設立時の資本金は1,000万円未満(1,000万円は含まれません)にする。

    設立時の資本金が1,000万円未満の場合、消費税の納税が免除

   されます。

    これを活用して、個人から法人へチェンジすると、最大4年間消費税

   が免除されます。  

 個人1年目 個人2年目  個人3年目 
 売上1,500万円 売上1,800万円  売上2,000万円 
 消費税なし 消費税なし  消費税あり

個人3年目に資本金500万円で法人設立

 個人1年目 個人2年目  法人1年目  法人2年目 
 売上1,500万円 売上1,800万円  売上2,500万円  売上3,000万円
 消費税なし 消費税なし  消費税なし 消費税なし

消費税のみを考慮して、法人成りを行う事はお勧め致しませんが、

ひとつの方法としては有効な手段と考えられます。

 ④ 設立日から最初の決算日は長めに設定する。

    ③では、資本金1,000万円未満で、消費税が2年間免除されると

   記載していますが、厳密には、2事業年度が正しい表現です。

    つまり、4月1日に設立した法人は、決算日を5月31日にするより、

   3月31日にした方が、第1期目の事業年度が長くなるので、消費税の

   免税期間が最大限活用できます。

 ⑤ 源泉所得税を半年ごとに納めれるように届出を行う。

    従業員の方に、お給料を支払う場合、源泉所得税を差し引いて

   支払います。

    額面30万円 源泉所得税5万円 本人への支給額25万円の場合、

   25万円は本人へ支払いますが、残りの5万円は、従業員の方の代わ

   りに会社が税務署へ支払うことになります。

    原則、9月中に支払った、お給料に対する源泉所得税は翌月の10日、

   つまり10月10日までに税務署へ支払うことになりますが、これでは、

   毎月の作業が大変です。

    そこで、従業員が10人未満の会社は、次のように半年分まとめて支払

   うことができます。

    1月〜6月分⇒7月10日

    7月〜12月分⇒翌年1月20日

    この適用を受けるには、適用月の前月末日までに、『源泉所得税の

   納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期

   限の特例に関する届出書』を提出する必要があります。

    ものすごく長い名前ですが、事務作業の効率化のため、ぜひ、提出

   されることをお勧めします。

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高松市の税理士、川上智也税理士事務所(会計事務所)です。高松市、坂出市、丸亀市等を中心に税理士として活動しております。法人の決算、個人の確定申告などの基本業務はもちろんのこと、会社設立、医療(医療法人、個人診療所)、相続・贈与など、税金や会計に関することは当税理士事務所(税理士会 高松支部所属)にお任せください。