相続は、今まで大切に築いてきた財産を、下の世代に引き継ぐ大切な作業です。

 相続と聞くと難しいイメージをお持ちかもしれませんが、きちんとした予備知識が

あれば、その引き継ぎ作業も上手に行う事ができます。

 財産を上手く引き継ぐには次の3つのポイントがあります。

 1. 争族(そうぞく)の防止

 2. 相続税の納税資金の確保

 3. 節税対策

 これらのポイントを押さえていくためには、まず、ご自身の財産を把握することから

始めましょう。上手な相続はこの財産の把握からスタートします。

 相続は、資産をお持ちの方の『願い』を実現するものでなければいけません。

 そのためにはその『願い』が何かを明確にする必要があります。

 例えば、『その財産を誰に相続させるか』、『特定の人に集中して相続させるか』

『相続税のコストより争族対策に力を入れたい』 などです。

 それには、まず、ご自身の財産の把握が必要です。具体的には、

 『財産や負債がどこにどれだけあるか』、『今の価値はいくらか』、『その財産は

上手く活用されているか』、『今相続が発生した場合、相続税を支払えるだけの

お金があるか』など、これらの現状をしっかり認識しましょう。

 人がお亡くなりになった場合、相続税が発生するのは、

 100人のうち5人程の割合です。

 これは何故かというと、相続税には

 『一定の財産までは税金をかけません』

 という、規定があります。

 これを、税務用語で基礎控除と言います。

 基礎控除は、

 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数

 で計算されます。

 例えば、ご主人が亡くなり、相続人が妻と子供2人の合計3人の場合、

 相続財産が

 8,000万円 ( = 5,000万円 + 1,000万円 × 3人)

 までは、相続税がかかりません。

 相続対策を行う場合、まず、概算で財産の金額を把握し、

 相続税がかかるか、かからないかを確認してみましょう。 

 『財産を把握することが大切』というのはよくわかりますが、どこまでが財産?

と思われる方も多いと思います。

 相続税がかかる財産には、目に見えるもの、見えないものを含め多々あります。

次の図を参考に、ご自身の財産を一度チェックしてみて下さい。

【相続財産として相続税の対象となるもの】

土地 田、畑、宅地、山林など
土地に関する権利  借地権、耕作権など
家屋 家、貸家、工場、倉庫など 
個人事業用資産

機械、備品、営業車、船舶、在庫商品、農産物、売掛金

受取手形、事業上の貸付金など

有価証券 上場株式、自社株式、国債、社債など 
現預金 現金、普通預金、定期預金、郵便貯金など
家庭用財産 家具、電話加入権、書画、骨董品、宝石など 
その他 自家用車、ゴルフ会員権など 

 財産には現預金や不動産のように目に見えるものから、他人に土地を借りてい

る場合の借地権など目には見えない無形の財産も含まれます。

 相続税法では、『相続財産でないものを相続財産とみなす』

という規定があります。

 相続財産とみなされて課税されるものは多くございますが、主なものを列挙

すると次の通りです。

【みなし相続財産】

 名称 内容 
生命保険金 

被相続人の死亡により支払われる保険金で

被相続人が保険料を負担していたもの 

死亡退職金

被相続人が受け取るべき退職金で、死亡後に

遺族に支払われたもの 

生命保険契約に

関する権利

被相続人が保険料を負担していた保険契約で

、相続発生時に保険事故が発生していないもの 

定期金(年金)契約

に関する権利

被相続人が掛金を負担していた郵便年金契約等で

相続時に、年金の給付事由が発生していないもの 

定期金(年金)の

受給権

被相続人が支給を受けていた郵便年金等で、

被相続人の死亡後遺族に支給される年金など 

☆ 被相続人とは、亡くなった方のことを言います。

 生命保険や退職金は、残された遺族の保障という目的がありまうので、

 全額に相続税がかけられるのは、酷というものです。

 そこで、生命保険と退職金については、次の金額までは相続税が、

 課税されないこととなっております。

 (相続税がかからない金額)

 500万円×法定相続人の数

 例えば、奥さん、長男、次男の3名が相続人の場合、

 1,500万円(=500万円×3)までは相続税がかかりません。

 借金があると相続税が軽くなる…

 これは、相続税の計算の基となる金額が『財産』−『債務』となっているからです。

 相続では「借金も財産のうち」です。ありがたくない財産ですが、

 亡くなった方に債務があれば、相続人が放棄しない限り、

 相続人が負担しなければなりません。

 では、どのような債務が財産から控除できるのでしょうか?

 意外と?たくさんありますので、次をご確認ください。

 ◎金融機関からの借入金

 ◎クレジットローン等の各種未払債務

 ◎商売上の買掛金、未払金

 ◎亡くなる前の入院費や医療費で相続後に支払ったもの

 ◎亡くなった方のその年の所得税

 ◎亡くなった時に未払いの固定資産税や住民税など

 実際に相続があった場合には、葬式費用も相続財産から控除して

 相続税の計算を行います。

 次のような費用が、相続財産から差し引くことができますが、中には

 領収証のもらえないものもありますが、その場合には、

 費用の支払先、日付け、金額、内容を細かくメモに記載しておきましょう。

 (相続財産から差し引ける費用)

 ◎ 通夜費用、仮葬式費用、本葬式費用

 ◎ お布施

 ◎ 火葬場等へのタクシー代など

 (相続財産から差し引けない費用)

 ◎ 香典返し

 ◎ 墓地の購入費用

 ◎ 初七日法要費用、四十九日法要費用など

 ※ 香典返しは通常葬儀に伴う支出のため、相続財産から差し引けそう

   ですが、これは収受する香典は課税されないため、支出費用も控除の

   対象から除かれています。

財産をお持ちの方がお亡くなりになった後、その相続財産をめぐり、

親族間で争いが起きるケースがあります。

その争いを避けるために有効な手段が遺言書の作成です。

生前に、自分の財産を誰に渡したいのか明確な意思表示を遺言にしておけば

100%ではありませんが、相続人は相続争いから解放されます。

相続人が多ければなおさら遺言書の作成が効果的です。

(1) 遺言とは

    遺言者の自由な最終意思を確保する制度です 「死んだら、

   私の財産はすべてAにあげる」というように、自分の死後の財産のことなど

   について書き残すことを遺言と言います。

    遺言は、満15歳に達すれば誰でも遺言をすることができますが、

   代理人によって行うことはできません。

    また、遺言は厳格な方式によって行われる単独行為となります。

    遺言の効力は死後に生じますので、本人の生存中には何の効力もありません。

    また、いつでも遺言書の方式に従って、その遺言書の全部または一部を

   撤回することができます。

(2) 主な遺言の種類

    遺言書には次の3種類があり、それぞれのメリット・デメリットは次の通りです。

  自筆証書遺言 公正証書遺言  秘密証書遺言 
記入者

本人

公証人(口述筆記)

誰でも可能

証人又は

立会人

不要 証人2人以上 

証人2人以上と

公証人 

署名押印  本人 

本人、証人及び

公証人 

本人
検認 必要   不要  必要 
メリット ・費用がかからない 

・紛失や改ざんの心配がない

・遺言の有効性が高い

・遺言内容を秘密にできる

・改ざんの心配がない

デメリット

・紛失や改ざんのおそれ有り

・作成が文字を書ける人に

 限られる

・費用がかかる

・手続きが面倒 

 

・手続きが非常に煩雑

 

 

 相続税の納税資金の確保には生命保険が効果的です。

 ただし、納税資金対策のために生命保険に加入する場合には、

 まず、相続税がどれくらい課税されて、今現在、納税資金(現預金等)が

 どれくらい確保されているかなどの現状分析を行う必要があります。

 その上で、生命保険で納税資金がいくら確保できるか、

 その場合の保険料はいくらかなどのプランを作成します。

 生命保険の種類には様々ありますが、

 相続税の納税資金確保のために生命保険に加入する場合には、

 一生涯保障の続く終身保険をベースにして加入することが基本となります。

相続税を少なくする対策は数多くありますが、その中でも一番有効な方法は

『生前贈与』です。特に、現預金等の金融資産はこの生前贈与が効果的です。

「小さいことからコツコツと」という言葉がございますが、こまめな毎年の贈与が

将来大きな効果を生み出します。

(1) 毎年110万円までの贈与は贈与税がかからない

    贈与税には、毎年110万円までは贈与税をかけませんと言う非課税の

   枠があります。

   (例)50歳から75歳まで子供に対して毎年110万円の預金を贈与した場合

    2,750万円( = 110万円 × 25年 ) もの相続財産を無税で引き

   継ぐことが可能です。1年あたりの金額は110万円とそれほど多くありませ

   んが、早いうちから行うことにより、その効果を大きくすることが可能です。

(2) 配偶者へ不動産を贈与!

    現預金等の金融資産は(1)の通り、対策があるけど、不動産はどうするの?

   と、思われるかもしれません。不動産は金額も大きいですし、その対策が

   難しい部分でもあります。

    その中でも、比較的対策を行いやすいのが、自宅の土地建物です。

    婚姻期間20年以上の夫婦間で自宅の贈与を行った場合、

   2,110万円までは、贈与税がかからず、無税で、資産を移転することが

   できます。

    通常の場合、一生に1度しか使う事ができない特例ですので、ぜひ活用

   しましょう。

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高松市の税理士、川上智也税理士事務所(会計事務所)です。高松市、坂出市、丸亀市等を中心に税理士として活動しております。法人の決算、個人の確定申告などの基本業務はもちろんのこと、会社設立、医療(医療法人、個人診療所)、相続・贈与など、税金や会計に関することは当税理士事務所(税理士会 高松支部所属)にお任せください。